その33.                                       
マミーは僕たち犬と暮らす人達は多かれ、少なかれ、不思議な事に遭遇するも
のだと信じている。
この話は、メイシーという犬と飼い主のおばあちゃんの話なんだ。
おばあちゃんは旦那さんを何年か前に病気で亡くして、メイシーというハスキ
ーの雑種の犬と暮らしていたんだ。
子供達も皆家庭を持っていたから、おばあちゃんは一人暮らしだった。
メイシーはおばあちゃんにとっては、一番大切な親友で子供で話し相手だった。
ある日、おばあちゃんは腕の傷からバイ菌が入ってしまい、炎症を起して、病
院に行く事になったんだ。
娘さんに電話して、自分が病院に行っている間、メイシーの面倒を見てくれる

娘さんはすぐにメイシーの面倒を見に来てくれた。
ところが、2日目にメイシーは家の庭から逃走してしまったんだ。
娘さんは他の兄弟にも電話して、メイシーが居なくなったので探すのを手伝っ
て欲しいと頼み、近所の人達も協力してメイシーを探したけれど、見付からな
かったんだ。

その頃、メイシーは一度も行った事のないおばあちゃんの病院に来ていた。
おばあちゃんの家からは3Kも離れていたし、今まで一度も来たことがなかっ
たんだ。
でも、おばあちゃんが恋しくて、病院の前まで辿りついたんだ。
メイシーは玄関でワンワンと咆えたり、ワウーンと遠吠えをしたりして、何と
かおばあちゃんに自分が会いに来た事を知らせ様としたんだ。
モチロン、病院の人達は頭のおかしい犬だと思って追い払ったけれど、メイシ
ーはなんと3回もロビーに入ろうとしたんだ。おばあちゃんが中に居る事は判
っていたから。
遂に、病院は警察とアニマルコントロールを呼んで、メイシーは捕まった。

その頃、おばあちゃんはは腕の炎症がひどかったので、手術をして、入院して
いたんだ。ロビーに入ろうとした犬の事も全く知らなかった。
娘さんはおばあちゃんがショックを受けると思って、家に帰って来るまで、メ
イシーが行方不明の事は話さなかったんだ。
腕の傷が良くなって家に帰ったおばあちゃんは娘さんから、メイシーがおばあ
ちゃんが病院に行った次の日に庭から消えてしまった事を知ったんだ。
おばあちゃんは毎日、毎日メイシーが帰ってくるのを神様に御願いし、元気で
居る事を願ったんだ。でも、淋しくて、淋しくて、腕の傷は良くなったけれど
、すっかり、落ち込んでしまったんだ。
メイシーは病院の前で捕まった後、シェルターに入れられたけれど、野良犬扱
いだったから、誰も貰い手がつかなければ、眠らされる事が決定したんだ。
そして、明日眠らされるという日に一人の女の人がシェルターでメイシーを見
つけた。
この女の人はその地域のアニマルアクテイビストのヘレンさんだった。

メイシーを見て、何かある事を感じて、メイシーを養子として引き取る事にな
った。
メイシーは半分ハスキーのきれいな犬だったし、ヘレンさんはいつも動物の保
護のため活動しているから、勘が働いたんだ。メイシーがただの野良犬じゃな
い事を。

それから、メイシーはヘレンさんの犬として新しい家で暮らしていたけれど、
散歩の時に毎日、同じ方向に向かってズンズンと自分で歩いて行こうとするん
だ。
グングンとヘレンさんを引っ張って行く。
これは、こちらの方向に何かあるのだとヘレンさんは感じたんだ。
そして、ある日、ヘレンさんはメイシーを車に乗せて、いつも行こうとする方
向に走ったんだ。そうすると、ある街角の車の往来の激しいインターセクショ
ンで突然、メイシーは少し開いていた窓から飛び出して、そのインターセクシ
ョンを横切り、路地に駆け込んだんだ。
ヘレンさんはビックリして車を停めて、すぐにメイシーを追いかけた。
路地まで来ると、男の子がメイシーを抱きしめていたので、
「離さないで!その犬は私の犬なのよ」と叫ぶと、男の子が
「違うよ。僕のおばあちゃんの犬だよ。メイシーだよ」と答えたんだ。

それから、男の子とヘレンさんはおばあちゃんの家まで行き、メイシーが長い
間迷子で行方不明だった事と、メイシーがおばあちゃんの所に帰りたくて、毎
日、同じ方向にヘレンさんと連れて行こうとした事が判ったんだ。
もちろん、おばあちゃんは泣いて喜び、メイシーも長い旅から戻ったんだ。
おばあちゃんもヘレンさんから、メイシーが病院の玄関で咆えたり、遠吠えし
ていた所をアニマルコントロールに捕まった事を聞いて、自分に会いに来たの
を知ったんだ。
ヘレンさんはメイシーが飼い主に戻った事をとっても喜んで、おばあちゃんに
メイシーを返したんだよ。

それから、何年かして、おばあちゃんはベッドで眠るように亡くなってしまっ
たのだけれど、メイシーもおばあちゃんのベッドの下で一緒に静かに死んでい
たんだ。
おばあちゃんと最後まで一緒にいて、天国にも一緒に行ったんだよ。

とっても、不思議な話でしょう。
                                      
つづく(次号掲載は5月24日を予定しています)