その40.

チチは8歳になった。僕は9歳だ。
9歳といのは、人間でいうと60歳くらいらしいから、遂に、ダディの年を越
えちゃった。
でも、外では、皆僕たちの事を若い犬だって思っているよ。
チチは体が小さいから、よくパピーと間違えられる。
相変わらず朝は5時半にダディと車で森に行って、7時半までジョギングに付
き合うし、週末は6時から9時半までいつもの森の後、ビッグフィールドでハ
ンテング三昧だ。
時々、でっかいラクーンと遭遇して、凄い戦いをして興奮しすぎると、家に帰
ってから、疲れきってしまって、動けなくなる事もある。

マミーは僕が死んだんじゃないかと思うほど、激疲れで動けない事も出てきた。
マミーは僕の事を「ジジードッグ」と呼ぶようになったんだ。

ビッグフィールドには幾つも森があって、鹿や色々な動物やコヨーテも住んで
いる。

ある日、ダディと僕とチチがトラッキングしていると、100Mくらい先にコ
ヨーテがいたんだ。
チチは初めて、怖くなってダディの後ろに隠れた。ダデイもコヨーテが襲って
くるんじゃないかとちょっと、心配したみたいだけど、コヨーテは人間が怖い
から、すぐに姿を消すんだ。
でも、その日は違っていたよ。
僕たちが歩き始めると、100Mの間隔を保ったまま、ずっと、僕たちに付い
てくる。

どこまでも、どこまでも。僕たちに凄く、興味があるみたいだ。
僕とチチはダディから離れて、ハンテングに向かった。
いつもの事だから、ダディは一人でどんどん歩き始めた。
最後に駐車場で合流する事になっているから、ダディは心配しないんだ。
僕たちがスカンクやラクーンやフィールドマイスの巣穴を探していると、あの
コヨーテがやって来た。まあ、同じ犬科同士だから話は通じるんだけど。
コヨーテは一匹コヨーテで淋しいらしい。何故か、僕の事が気に行ったみたい
だ。
始めはちょっと離れ見ていたけれど、段々近づいて来る。
チチはどんなに大きな犬でも平気で向かって行くのに、コヨーテは苦手だった
みたいだ。気が付くと、チチはダデイを探しに行ってしまっていた。
コヨーテは僕より少し小さいんだ。どんどん、近づいてきた。
僕は無視して、好き勝手に動き回っていると、コヨーテは僕の直ぐ後ろについ
て、同じように動き回る。別に喧嘩を仕掛けてくる訳じゃない。ただ、ついて
くる。
僕は、コヨーテを無視して好きにさせておいたよ。コヨーテもそれが良かった
みたいだ。
僕はコヨーテと友達になった。まだ、若いコヨーテで怖いものがないみたいだ。

2時間くらい僕はコヨーテと遊んで、時間だからダデイの所に戻るよとコヨー
テに言って、駐車場に戻った。すると、コヨーテも一緒に来ちゃったんだ。
ただ、ダディの姿を見つけると、名残惜しそうにして、またちょっと、離れた
所で僕たちの事を見ていた。
「おい、タマちゃん。コヨーテと遊んでいたのかい?」とダデイが聞いた。
とっても、ビックリしたみたいだった。

それから、ビッグフィールドに行くとあのコヨーテが僕を待っているようにな
ったんだ。

その話を、ダディはデビーさんにした。デビーさんもスクービーとダステイを
連れて、同じビッグフィールドに行くので、そのコヨーテに遭遇した事があっ
たんだ。
「そうそう、コヨーテが丘の上から見ているのよ。もう、怖くなって、一緒に
行った近所の人と大声を出したり、その辺の枝を投げたりして追い払ったのよ。
えー、タマタマがコヨーテと遊んだって?きゃー、信じられない!」
と言ったんだ。

僕はコヨーテが襲って来たって、充分戦えるし、コヨーテはいい奴なんだ。
ただ、誰も遊んでくれないだけなんだ。
                                         
つづく(次号掲載は7月19日を予定しています)