その51.

大体、ペットというと犬やネコって思う人が多いみたいなんだけど、この前マ
ミーが知り合ったロビンさんの話はブタなんだ。

ロビンさんは娘のメアリーさんの40歳の誕生日に子豚をプレゼントした。
結構、アメリカでは子豚のペットは人気があるらしい。
メアリーさんも凄く喜んで、僕たちと暮らすように、子豚を可愛がったんだ。
ある日、会社から1ヶ月間出張の命令が出て、子豚のルルの面倒見をお母さん
のロビンさんに頼んだんだよ。
ロビンさんの家は大きい庭があってコッカスパニュエルのエルもいて、すぐに
子豚のルルはエルとも仲良しになったんだって。
ところが、一ヶ月間ロビンさんの家で美味しいものを沢山食べていたので、ル
ルは体重が150Kになっちゃったんだ。
でも、ロビンさんはルルが可愛くて、可愛くて仕方がない。
エルに色々な芸当を教えたように、ルルにも教えると、ルルは凄く頭が良くて、
お座りもお手も待ても出来るし、なんとデッド ピギーという死んだふりまで
出来るようになっていた。(僕たちだってバンって指ピストルで撃たれると、
死んだ真似するよ)

1ヶ月後にメアリーさんが帰ってルルを迎えに来たけれど、その時のルルは巨
大に太ってしまっていて、メアリーさんは家に連れて帰っても面倒が見れない
と思ったんだ。
もちろん、ロビンさんはルルが可愛くて仕方がないのだから、大喜びで引き取
ったんだよ。これで、ロビンさんと旦那さんとエルとルルの家族になった。

ロビンさんと旦那さんはフロリダのビーチに小さい別荘を持っていて、冬の間
はそこで過ごす。ルルが家族になった冬も、二人はエルとルルを車に乗せてフ
ロリダに行ったんだ。
旦那さんの趣味は魚釣りでその日も朝の5時に家を出て海に出かけて行ったん
だよ。
ロビンさんはゆっくりと8時まで寝て、さて朝ごはんを作ろうとキッチンに来
た。
所が、コーヒーメーカーのスイッチを入れた途端、左胸がキューと痛くなり、
その場に倒れてしまったんだ。
心臓麻痺だった。うーーって、苦しくて苦しくて胸が痛い。救急車を呼びたい
けれど、体が動かない。旦那さんは帰って来ないし、どうしよう。
エルはロビンさんの異変に気が付いたけれど、怖くて、ベッドの上でワンワン
咆えているだけだった。
そこにルルが心配して様子を見に来たんだ。
「ルル、ルル、胸が痛いの。誰か助けを連れて来て」
ロビンさんはルルが理解したかどうか判らないけれど、必死でルルに話し掛け
たんだ。
そうすると、ルルはトコトコと歩いて犬用のドアから外に出た。
庭から道路に出ると、そこでデッド ピギーをやったんだ。
ゴロンって道路に横になって何とか通る車を止め様とした。
でも、150Kの大ブタルルが死んだふりしても皆、避けて行ってしまい、車
は止まらない。

ルルはロビンさんが心配になって、また家の中にもどり、様子を見に行った。
そんな事を何回か繰り返すうちに小さな犬用のドアをすり抜ける時にルルの体
は傷だらけになり、血まみれになっていたんだ。
でも、ルルは何とか助けを連れて来ようとまた、道路で横になって死んだ振り
をした。
そこに、ピックアップトラックでフランクさんという若い運転者さんが通り掛
かり、大ブタが道路でヒックリ返っているのでビックリして車を止めて、ルル
に近づいて来たんだ。
ルルはフランクさんが車から出て来たので、直ぐに起き上がり、庭の中からド
アに歩いて行った。フランクさんはルルの後を着けてドアまで来ると、ドアを
ドンドンと叩いて
「オタクのブタちゃんが外に出てますよ」
と大きな声で言うと中からか細い声で
「心臓麻痺を起して動けないの。救急車を呼んで下さい」
とロビンさんの声がした。フランクさんはビックリして直ぐに携帯電話で救急
車を呼んで、ロビンさんは九死に一生を得たんだ。
危機一髪だったんだよ。救急車にロビンさんを乗せると、ルルも一緒に乗り込
もうとしたんだって。
全く、犬のエルは何にもしなかったのに、ブタのルルはロビンさんを助けよう
と頑張ったんだ。凄い奴だね。ルルは!       
                                      
つづく(次号掲載は10月4日を予定しています)