その62.

バーブラさんは娘さんとセラピストになる卒業のお祝いにメキシコに旅行に行
った。
でも、楽しいはずの旅行は、ある晩、バーブラさんを奈落の底に突き落とした
んだ。
町のお祭りで打ち上げられるはずの花火が見物をしていたバーブラさんを直撃
して、足首から上はヒドイ火傷をおってしまったんだ。
バーブラさんはその日、もう少しで死ぬところだった。
でも、それからがもっと大変だったんだよ。
生活は地獄の悪夢のようだった。ヒドイ全身の痛みと気持ちがウツになり、心
は暗く、自殺までしようかと考える程だったんだ。
それから2年がたったけれど、まだまだ、全快はせず、ケロイドになった皮膚
の整形手術やリハビリの毎日だ。
そんなある日、バーブラさんは新聞で野良犬がテーンエイジャーに火を点けら
れて大やけどをおって死にそうになった所を近くの人に助けられたけれど、や
っと見つけた獣医さんはオーナーのいない野良犬の治療は出来ないと拒否した
という話だったんだ。
バーブラさんは自分も大火傷をおってリハビリの毎日でこの可哀想な野良犬の
話は他人事ではなくなってしまった。
すぐに、新聞社に電話をして、この獣医さんのクリニックの連絡先を聞き、娘
さんと一緒に飛んで行ったんだ。
バーブラさんは野良犬の治療費を全額負担して、この野良犬を助けたんだよ。

それから2ヶ月間、バーブラさんと娘さんは毎日仕事が終わるとこの小さな犬
を見舞ったんだ。それに、あの治療を拒否した獣医さんではなく新しい獣医さ
んに治療をしてもらい、小さな犬は驚異的に元気になったんだよ。
それに、人間に火を点けられて大火傷をおわされたのに、本当に優しい可愛い
犬だった。だから、クリニックの人が「スイート ハート」っていう名前を付
けたんだよ。

その後、退院すると、モチロンバーブラさんの所に貰われたんだけれど、地元
のトレーナーの人がスイート ハートをソーシャル セラピー ドッグ プロ
グラムに入れて、トレーニングしてスイートハートはセラピー ドッグになっ
たんだ。

それからは、バーブラさんと一緒に家の近くの病院の火傷の被害者をお見舞い
して彼のパワーで患者さん達がヒーリングされているんだって。

つづく(作者の都合により、しばらくお休みします)