その81.

ある日曜日、ダデイとマミーと僕たちは、お友達の家に遊びに行くので、車に
乗ってお出かけした。
丁度、マーレンの家の角のストップサインで止まると、ビルさんとマーレンが
家の中から出て来たんだ。
「おー、ビルさん、久しぶりだね、あれ、マーレンだけ?ブラザーのバーバは
どうしたんだい?」
とダデイが声を掛けると、ビルさんが車に寄って来たんだ。
マーレンは嬉しそうだった。
僕たちに向かって、ジャンプして、嬉しい、嬉しいって喜んでいる。
マーレンが嬉しそうなのを見るのは、何ヶ月振りだろう。
いつも、でしゃばりでプロブレムチャイルドのバーバが僕とチチにガウガウと
喧嘩を吹っ掛けてくるので、マーレンはバーバの後ろで済まなそうに耳をたれ
て、困った顔をしていたからね。
「いや、ゴードン、本当に久しぶりだね。実は、僕とシェリルはアラスカに1
2日間バケーションに行くんだ。それで、マーレンは友達の家にホームステイ
するんだけれど、バーバはあれでしょう。それで、他の人でバーバを可愛がっ
てくれる人がいるので、そこに行かせたんだ。もし、その人の所でバーバが上
手くやっていけそうだったら、そのまま、そのうちの子と言う事で引き取って
貰おうと思っているんだよ」
直ぐ後ろに車が来てしまったので、
「じゃ、また」
と言って、ダデイは車を発進させて、僕とチチはマーレンにバイバイした。

「やっぱりねー。そうだと思ったわ。人間サイドは一人っ子は可哀想だから、
兄弟が出来れば、淋しくないだろうと考えるけれど、何でもいいという訳じゃ
ないわよね。バーバが可哀想な過去を背負っているのは判るけれど、マーレン
はバーバが来てから、ちっちゃくなっちゃて、他のお友達と遊べなくなってし
まったものね。あれじゃ、マーレンが可哀想。タマタマともチチとも接触出来
なかったし、シェリルが言っていたけれど、一度、バーバを家に閉じ込めて、
マーレンとタマタマとチチを遊ばせた事があったんだけど、その後、バーバが
嫉妬して大変だったんですって。バーバも気に入ってくれる人がいるのなら、
そこでお山の大将やったほうがいいわよ。マーレンのあの晴れ晴れとした顔見
た?バーバが居なくなって、よっぽど嬉しかったのね」
とマミーは一気に喋った。
マーレンは僕たちと遊べなくなっていたけれど、お向かいのドーベルマンもバ
ーバが嫌いで、結局、今までのお友達とは接触出来なくて、うるさいバーバだ
けになってしまったからね、アー、よかったよ。
僕もチチもマーレンの久しぶりの幸せそうな顔を見て嬉しかった。
このまま、バーバが帰って来ないといいなあ。

つづく(次号掲載は7月4日を予定しています)