その90.

マミーは10月のアートショーのために、毎日作品作りに燃えているんだけど、
アメリカのテレビは見るものがないと、図書館から山の様に映画を借りてきて、
それを見ながら、お仕事している。
今日は、沢山の映画の中で、マミーがビエービエーと泣きつづけて大感動した
映画のお話だよ。

男の人が交通事故にあって死んでしまうんだ。
そして、気がつくと、中華料理屋の裏で野良犬の赤ちゃんとして生まれ変わっ
ていた。
でも、自分が人間だった事にはまだ、気がつかないんだ。
フラッシュバックのように、奥さんの顔が出てきたり、子供の顔が出てきたり
している。
そこに、野良犬狩りが来て、お母さん犬も自分の兄弟も全部捕まえられて、シ
ェルターに入れられてしまうんだよ。
シェルターで自分の入った檻の前で「明日にでも眠らせよう」と話しているの
を聞いて逃げる決心するんだ。
係りの人が掃除のために檻のドアを開けると、その隙をついて、逃げ出した。
逃げて、逃げて、町の中を走りつづけるんだよ。
小学校の所まで来て、子供達がネットの向こうから、手を差し伸べて、いい子、
いいコしてくれたんだ。すると、自分の人間だった時の息子の顔がフラッシュ
バックしてきた。
何とかして、奥さんと息子を探さなければとまた、町を走るんだ。
夜になり、どうして良いか判らなくてウロウロしていると、ホームレスのおば
ちゃんが、一緒に暖めあおうと自分の寝床に招き入れてくれて、それから、お
ばちゃんと一緒に暮らすようになるんだよ。
おばちゃんにフルークっていう名前もつけてもらうんだ。昼間は、道端で前に
缶からを置いてお金を下さいと通りかかる人たちに御願いするけれど、誰もお
金を恵んではくれない。そこで、おばちゃんは芸当をすればいいんじゃないか
と、3つのクルミの殻を出して、そこにちいさい石を1つ隠して、どこにある
か当ててごらんというと、100発100中で当てるようになり、通行人にあ
まりに賢くて可愛い子犬なので、大人気になり、お金が入ってくるようになっ
たんだ。
所が、ある日、おばちゃんは心臓麻痺をおこして、救急車で運ばれて、一匹ぼ
っちになってしまうんだけど、おばちゃんがきっと帰って来ると信じて、その
場でずっと待ちつづけるんだ。
そこに、今度はランボーっていう大きな犬があらわれて、もう、おばちゃんは
死んじゃったから戻って来ないから自分と一緒に行こうとフルークを誘うんだ
よ。
マーケットの中のコーヒースタンドに行くと、懐かしいいい匂いがしてきた。
マスターがランボーにソーセージをくれて、新しい友達のフルークにもくれた。
実はそのコーヒーショップの壁に掛かっている海軍の制服を来たマスターの弟
の生まれ変わりが、ランボーなんだ。マスターはもちろん、ただの犬だと思っ
ているけれど、すごく可愛がってくれるんだよ。
ランボーとは大親友になるんだけど、ある日、フルークは動物実験用の犬とし
て、捕まえられて、実験材料にされてしまう。
そこにランボーが窓を破って助けに行く。でも、フルークは目に薬をさされて
ちゃんと見えないので、ランボーが自分の尻尾を噛ませて、誘導するんだ。
でも、研究所の悪い奴に見つかって、ランボーは撃たれてしまう。
ヨロヨロと湖のほとりまで来ると、ランボーは動けなくなり、死んでしまうん
だ。
また、一匹ぽっちになってしまったフルークは、町で自分の人間だった時の奥
さんと息子を見つける。嬉しくて、車に飛びつくと奥さんは気が狂った犬だと
思って、車で走り去ってしまうんだ。
途中まで、追いかけるけれど、家のことを思い出していたので、歩きつづけて、
辿り着く。
窓の外で中に入れてくれとドアをガリガリやったりするんだけど、奥さんは気
味悪くて、警察に届けようとするんだ。でも、息子がずっと、町から追いかけ
て来て、きっとお腹をすかしているのだから、お水と食べ物を上げようと説得
して、フルークは家に入れてもらえるんだ。
それから、家に住み着くのだけど、行動が変なので奥さんも変な犬だと思って
いる。
何とか、自分が死んだ旦那さんなんだって知らせようと自分が人間だった時の
帽子を被ったりしてみるけれど、奥さんにはわからない。
そこに、自分の親友だった男が今は奥さんの恋人になっていて、遊びに来る。
すっかり、自分の中で親友は自分が死んだ原因で悪い奴だと思い込んでいたの
で、飛び掛って噛み付いちゃうんだ。
男は警察とアニマルコントロールに電話して、気が狂った犬がいるとリポート
して警察が来て、家の近くを警戒するんだ。
すっかり、親友は悪い奴で、奥さんと子供が危険だと思い込んでしまったので、
親友の車の中に」隠れて親友が車に乗ってくると、後ろから襲って、事故を起
してしまい、自分も投げ出されて雪道に叩きつけられる。
すると、どんどんと色々な事を思い出して、親友は悪い奴なんではなく、自分
が馬鹿だったから事故を起し、親友はいつも助けてくれていたという事に気が
つくんだよ。
何て事を引き起こしてしまったんだ!親友を助けなければと前足の一本の骨が
折れてしまっているのを引きずりながら、滅茶苦茶になった車の運転席によじ
登ると、親友が血まみれになっている。
目を覚ましてくれと顔をぺろぺろ舐めると、親友が目をさまし、息子が行方不
明でこの雪の中では死んでしまう。探しにいってくれ!って言うんだ。
きっと、自分のお墓にいるはずだと足を引きずりながら辿り着くと、息子が雪
の中に倒れている。
その上にかぶさって、体を暖めていると、奥さんも息子は旦那さんのお墓にい
ると気がついて、探しに来る。息子が「フルークが僕を暖めてくれたんだよ。
助けてくれたんだよ」と言って、車の中に抱かかえられて入れられた後、奥さ
んがフルークの所に戻って、「一緒に行こう」と声を掛けるのだけど、ジーと
フルークは動かず、奥さんを見たと思ったら、雪に埋もれた墓石の自分の人間
だった時の名前を前足で雪をかいて、僕だよ。って何とか知らせようとする。
奥さんは何をやっているのか、まだ判らず、立ち尽くしていると、フルークは
その場から去って行くんだ。自分が奥さんや子供の所に戻れば、邪魔をする事
になるから、生まれ変わった犬として生きて行こうと決心して去っていくんだ。
そして、最後に「貴方の側にいる犬やネコやペットたちも誰かの生まれ変わり
かも知れません。ただ、私たちが気がつかないだけなのです」というナレーシ
ョンが入って終わるんだ。
もう、マミーは映画の初めから終わりまで、ビービーと泣いていた。
そして、僕の事を見て「あんたはね、絶対に忍ちゃんの生まれ変わりなんだよ。
ちゃんと、判っている。」と言ったんだ。
忍ちゃんというのは今から25年位前のボーイフレンドですごくいい人だった
んだけど、恋人にはなれなかった人なんだ。奥さんを貰って、自分にそっくり
の息子が生まれた途端、メラノーマで35歳で死んでしまったんだって。
だから、僕の皮膚に黒い出来物が出来た時、大騒ぎしたのも、実は僕は忍ちゃ
んの生まれ変わりだと信じているので、人間だった時と同じ病気になるのは辛
い過ぎると考えていたんだ。
忍ちゃんがマミーの事が大好きだったのも結婚したいと思っていた事も知って
いたので、こうやって、この世で「タマタマ」という犬の形で一緒に暮らす事
になったんだって信じているんだ。
だから、この映画を見て、大感動しちゃったんだよ。とってもいい映画だから、
沢山の人たちが見てくれるといいね。そうか、僕は忍ちゃんの生まれ変わりな
のか。ふーーん。

つづく(再開しました)